人気のない公園の木陰。
餌付けされた群れのなかから、一羽の鳩が近づいてきた。
わたしとの距離は3メートルほど。
じっとわたしを見つめている。雌鳩である。
「どうした?」
そっと声をかけてみた。すると。。。
その場にしゃがみ込んでしまったではないか。
首をかしげかしげしながら、わたしから目を離そうとしないのだ。
「そうか!」、と思うがはやいか、涙がこぼれそうになった。
「あのときは仕方なかったのさ、辛かったろうに。」
数か月ほどまえのこと、友人からこんな電話があった。
「ベランダの隅で鳩が卵抱いてるのよ、それもふたつ。。。」
気の重い仕事ではあったが、頑として動かぬ母鳥をなんとか追い立て、簡素な巣に残された卵二つを巣ごと、近くの公園の灌木の根元あたりに移動させた。
わたしはちょこんと伏した雌鳩を見つめながら、無事ふたつの卵が孵化したことを確信した。
ツツーっと片目から涙が流れ、そして落ちた。
Oh my soul!
わたしの呻きに驚いたのか、雌鳩は飛び去った。
「申命記」22章6節7節に気がついたのは、その後のことである。